「フチ上のポタポタが汚い」という声に着目
「ジャニスらしいトイレとは?」
「他社にない新機能は?」
「トイレで困っていることはないか?」
2004年、当時の営業部が主体となり発足された、新商品開発プロジェクトチームでは、日夜、喧々諤々の議論が重ねられていた。プロジェクトチームでは、新商品のコンセプトを決めるため、さまざまな声やアイデアを集め、それらを機能性とデザイン性の2つに分類し、開発課題を浮き彫りする議論が続けられていたのだった。
その中に、男女共用トイレでの「フチの上のポタポタが汚い」という声があった。この声はチーム内で多くの共感を集めたことから、開発課題の1つに取り上げられ、フチのフロント部分を大胆にカットするデザインも作成。仮称「フロントカット」の新商品開発は、順調に進んでいくものと思われていた。
やむなく「フロントカット」は開発を中断
しかし、2005年4月にリリースされた新商品は、今までにない、ローシルエットのデザインを採用したタンク式トイレ「Jeenar Primo」であった。当時プロジェクトチームでは、機能性で「フロントカット」を、デザイン性はローシルエットを両輪に開発を進めていたのだが、機能性とデザイン性の両立は開発スケジュールに大きな足かせとなっていたのだ。「このままでは発売日そのものが大きく崩れてしまう」やむなくプロジェクトチームは、「フロントカット」の開発を中断し、デザイン性を重視したローシルエットトイレの開発に専念することへ大きく舵を切ったのだった。
タンク式ローシルエット「Jeenar Primo」のクーペスタイルと名付けられた斬新なデザインは、多くの共感を呼び、「新しいジャニスのフラッグシップモデル」として人気の商品となっていった。
思いは1つ。「ジャニスらしいトイレを」
「Jeenar Primo」の発売から2年、新シリーズの商品開発が再び具体的に進んでいた。当時のトイレ業界は「節水」「うずを巻く洗浄水流」が当たり前の時代に突入、各社がこぞって6リットル以下の節水、うず巻き洗浄便器を発売していた。節水、うず巻き洗浄のトイレならすぐにでも形にできる。「だが…」商品開発部のメンバー全員の心にあった思いは、1つ。
「ジャニスらしいトイレが作りたい」
ジャニスらしいトイレとするため、アイデアをふり絞る日々が続いた。そのさなか、すでに解散していた2004年の商品開発プロジェクトメンバーの1人から、実現できなかった開発課題「フロントカット」の存在が明らかにされた。「これだ!」商品開発部では、「フロントカット」実現に向けた再トライが始まった。
課題は、洗浄水の飛び出し
問題を洗い出し、試作を重ね、数ヵ月後「フロントカット」1号機が完成した。しかし、「フロントカット」は、洗浄水流のコントロールが難しい。便器手前のフチがまったくないため、水量水圧の変化によって、洗浄水が便器外へ飛び出してしまうのだ。また一般的な水道は、地域・場所によって水圧等条件が異なるもの。試験場で合格しても、地域によって問題が起きる可能性はゼロではない。商品開発部のメンバーは、壁にあたっていた。1号機が完成した後も試行錯誤は続いた。
吐水量、便器手前のカーブ、フチの角度…少なくとも大きく5回のデザイン修正、試作、実験を繰り返し、8リットルの水流で流しても洗浄水が飛び出ることのない形状にようやくたどり着いたのだった。
「ジャニスらしいトイレ」がトイレの新常識に
2007年4月、ジャニスの新しいスタンダードとなる新商品として「CoCoClean」が発売となった。また、発売に合わせ、それまで仮称であった「フロントカット」は、正式に「フロントスリム(R)」となった。
フチ上のポタポタ汚れに着眼し、開発デザインされたフチ形状「フロントスリム」だったが、思わぬ落とし穴があった。「汚れはカタチのせいだった」というキャッチコピーが、響くと思っていた女性に響かないのである。なぜか?調査を進めると理由は明確だった。あるアンケート調査によると「約40%の男性が、座って小用をする」という事実に突き当たる。つまり、半数近くの家庭では、フチ上の汚れそのものが起きにくく、汚れを問題提起したキャッチコピーが響かなかったのだった。
日本経済新聞社主催の「リフォーム博」出展2回目に方向を転換。「フロントスリム」が「便器手前のフチ裏清掃が簡単」「見てお掃除ができる」点を訴求。お掃除をされる方へ向けたメインビジュアルと「フロントスリムは つまんでサッ!!」というキャッチコピーへ変更。気になるフチ裏が簡単にお掃除できるというアプローチは、瞬く間に女性の心をつかむことに成功。「CoCoClean」をヒット商品へと導き、今日まで続くロングセラーとなった。